第1章 本が出来るまで
この本は私「りんりん」が三女「うりりん」を出産した時のお話です。
うりりんは予定日より2ヶ月半も早く、私の誕生日に1200gで生まれて来ました。
その日からNICUという新生児集中治療室で過ごした103日間で、実際にどんなことをして育っていったのかを書きました。
私自身、看護師の経験もあり、二人の子どもを育てていてもなお感じた不安のために自分を責めたり、ない正解を求めた苦しさを、この先の子育てするママたちから少しでも減らせたらという思いと、「生まれてきた時から私たちはまず親子のコミュニケーションから学び始める」からこそ、親の言動がその後の子どもの成長の糧になるのだと実感したからです。
いろんな不安の中で少しでも「わからないことによる不安」を減らすことが具体的に出来ることだと思ったからです。
これからNICUで過ごすお母さんたちの不安が少しでもなくなって、子どもたちの未来を信じて子育てしていけたらいいなと思っています。
お母さんが我が子を心配するのは当然です。
私も不安と心配と、小さく産んでしまった申し訳なさで、初めて保育器の中のうりりんを見た時は泣くことしか出来ませんでした。ですが心配の代わりに我が子の生命力を信じ、祈ることの大切さに気付けたのも、この103日間に我が子の「生きている」という姿を見せて貰えたからでした。
本を書こうと思ったのは「明後日の午前中に退院です」と担当の看護師さんに言われた時です。
すぐに家に帰ってうりりんの写真のあまり悲壮感のないものをいくつか選び印刷しました。
「いのちのひかり かがやいているよ」と本の題名もすぐに決まりました。
NICUで感じた心配や不安の中でも、知識さえあれば安心出来ることや、受け止め方次第でもっと楽になれると思ったことを、NICUに来るお母さんたちに伝えたい。小さかったり病気や障害があっても我が子の生命力を「きっと大丈夫」と信じる心は、子育てにおいてずっと続く大切なことだと伝えたい、と思いました。
本を作っている間、うりりんの二人の姉たちも、お産の時に天使になった長男も応援してくれているような気がしました。
しかし、目の前の我が子を見て不安や罪悪感の中にいお母さんたちに、誰のどんな言葉が届くだろうか?押しつけになってもいけないし、お母さんたちが寄り添って欲しいのは誰だろう。そんなことを考えた時、うりりんが私を見てニヤ〜っと笑ったのです。この子は全てお見通しだな。うりりんからみんなにNICUを案内して貰おう!そう決めたらサクサクと進みました。
初版の本は1日半であっという間に出来上がり、退院時にNICUにプレゼント出来ました。
それまで看護師として経験してきたことが全く役に立たないほど、3人目の子育ては不安や心配がいっぱい。
まず第1子の時より10年経っていて自分の体力的にキツかった。日曜日の夕方、病院のエレベーターの中で歩けなくなり、誰もいないロビーを這って公衆電話まで行ったこともありました。病院だから整形外科で診てもらうことも出来たはずですがそのツッコミはしないでね。(笑)その時は整体院に片っ端から電話して、たまたま先生方の研修で開いていた整体院で診て貰い歩けるようになりました。
当時の大きな悩みは、この先どんな病気や障害がうりりんに判明するかわからないという、起きるか起きないかわからない不安でした。考えてもどうしようもないことだったのですが毎日悩んでました。今思うと笑っちゃうんですけどね。
一方で、その悩みがあったからこそ、常に「今の自分がうりりんのために出来ることは?」と考えてもいました。
母乳はお母さんの食べたもので出来ているということ以上に、そのお母さんがどのタイミングで出産したかによっても母乳に含まれるものは微妙に変わる、未熟児には未熟児にあった母乳が出る、ということは母乳で育てたい私の励みとなりました。
私の搾乳し続けた両胸は血管が切れて紫色に変わっていましたが、そのことは私の誇りでもありました。
何かをやろうとした時、その自己犠牲が全て悪いわけではありません。やりたかったらやっていいんです。でも、やりたくないことなら自分の気持ちに正直になっていい、私の子育てはそれを学ぶための30年間だったと思います。
もう一つ子育てで学んだ大事なことは周りと比べないこと。誰かが言った指標に合っているかいないかなんて本当に何の意味もなかった。赤ちゃんの平均体重が○g〜○g。自分の子がそこに入っているから安心とか入ってないからダメなんて一つもないってことを、末っ子の未熟児ちゃんが気付かせてくれました。
育てにくい子どもを育てているママたちは基準値やみんなが出来てるとかそういう他の基準に自分や子どもが合ってないことに不安になりますが、もっと目の前の子どもを信頼して「今は成長の途中、過程の中」で、全体の推移というもの、誰にでも凸凹はあるということを冷静に見た方が楽になります。そんなことも今だから言えることですけどね。